第17回 コラム
RSウイルスワクチン
こんにちは。暑くなってきました。気が付くともう熱中症の季節です。
今回はRSウイルスのつづきになります。
前回RSウイルスの大まかな話をしましたが、今回はその予防接種についてです。
現在日本国内で接種できるRSウイルス感染症を予防するワクチンには以下の2種類あります。
- アレックスビー
成人のRSウイルス感染症による重症化予防を目的。60歳以上の成人のほか、重症化リスクの高い50〜59歳も接種対象
- アブリスボ®
60歳以上の成人への重症化予防のほか、妊婦に接種を行い、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防も目的としている
まとめると以下のような特徴があります。
商品名 | アレックスビー筋注用 | アブリスボ®筋注用 |
予防できる病気 | RSウイルス感染症 | RSウイルス感染症 |
ワクチンの種類 | 不活化ワクチン | 不活化ワクチン |
定期/任意 | 任意接種 ・60歳以上の成人 ・50歳以上で重症化リスクが高いと考えられる人* |
任意接種 ・妊娠24〜36週の妊婦 ・60歳以上の成人 |
接種回数 | 1回 | 1回 |
接種量・接種方法 | 0.5ml 筋肉内接種 | 0.5ml 筋肉内接種 |
費用 | 1回約25000円 (施設により異なる) |
1回30000〜38000円 (施設により異なる) |
こどもとおとなのワクチンサイトRSウイルスワクチン より引用
またアレックスビーの接種の適応にある「50歳以上でRSウイルス感染症が重症化するリスクが高いと考えられる人」とは、以下のような疾患をお持ちの方になります1)
・慢性肺疾患、慢性心血管疾患、慢性腎臓病または慢性肝疾患
・糖尿病
・神経疾患または神経筋疾患
・肥満
・上記以外で、医師が本剤の接種を必要と認めたもの
50歳以上で上記に当てはまる方はワクチンを検討すべきかもしれません。
★RSウイルスワクチンの効果
続いてワクチンの効果については以下のようなことが分かっています。
- アレックスビー
60歳以上の成人でワクチン接種後6〜7ヶ月の追跡期間で、RSウイルス関連下気道疾患を82.6%予防した2)。
- アブリスボ®
ワクチン接種後平均7ヶ月の追跡期間で、少なくとも2つの症状を伴うRSウイルス関連下気道疾患を66.7%、3つ以上の症状を伴うRSウイルス関連下気道疾患を85.7%予防しました3)。
ただし、いずれも効果の持続性に関するデータはまだありません。
妊婦へのワクチンの効果については、アブリスボ®の国際共同第Ⅲ相臨床試験において、妊娠24〜36週の妊婦にワクチン接種を行うことにより、重度のRSウイルス関連下気道感染症について、生後90日以内で81.8%、生後180日以内で69.4%予防しました4)。妊娠28〜36週に接種を行なった方が、より有効性がより高い傾向が認められています5)。
なお、生後180日以降の有効性は確立していません。
以上よりRSウイルスワクチン接種が推奨されるひとは以下のようになります。
- 新生児および乳児におけるRSウイルス感染症の重症化を予防する目的で、妊娠24〜36週(特に妊娠28〜36週)の妊婦
- 60歳以上の方
- 50歳以上でRSウイルス感染症の重症化リスクが高い方
ちなみにCDC(米国疾病管理予防センター)では以下の方を推奨の対象としています6)。
・高齢者
・慢性の心臓または肺疾患のある成人
・免疫力が低下している成人
・特定の基礎疾患のある成人
・老人ホームや長期介護施設へ入所している成人
★RSウイルスワクチンの副反応
続いてRSウイルスワクチンの副反応です。新型コロナウイルスのワクチンでも副反応がいろいろ話題になったことは記憶に新しいですね。
RSウイルスワクチンにおいては臨床試験でワクチン接種による一般的な副反応以外に、RSウイルスワクチンに特異的な副反応報告はありませんでした2)3)。
ただアブリスボ®添付文書によると、百日咳含有ワクチンと同時接種を行った場合、単独接種と比べて、百日咳の防御抗原に対する免疫応答が低下するとの報告があり、注意が必要となっています5)。
茅ヶ崎市はまだですが、公費助成を行う自治体も増えており、GSKによると344の自治体(24年1月時点)で一定の公費助成が行われています。
当院でもRSウイルスワクチンを取り扱っておりますので、興味のある方は是非一度ご相談ください。
【参考文献】
1)アレックスビー添付文書
2) Papi A, et al. Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults. N Engl J Med. 2023 Feb 16;388(7):595-608.
3) Walsh EE, et al. Efficacy and Safety of a Bivalent RSV prefusion F vaccine in Older Adults. N Engl J Med. 2023 Apr 20; 388(16): 1465-1477.
4) Kampmann B, et al. Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants. N Engl J Med. 2023 Apr 20; 388(16) :1451-1464.
5) アブリスボ® 添付文書
6) RSV in Adults. CDC(米国疾病管理予防センター).
「グラクソ・スミスクライン株式会社 RSウイルス.jp」
日本プライマリ・ケア連合学会 感染症委員会 ワクチンチーム「こどもとおとなのワクチンサイト」