第19回 コラム
気象変化と体調②
こんにちは。
蒸し蒸しとした日も増えてきましたね。
気象変化と体調の話の続きになります。
気候の変化には気温、気圧、湿度などさまざまな要素がありますよね、その中でも気温や湿度の変化は直接的に体感できて体調の変化も感じやすいと思います。暑いなとか今日は湿度が高くて蒸し蒸しするな、とかです。
しかし気圧の変化はどうでしょうか。
朝起きて、今日は暑いな~と感じることはあっても、今日はやけに気圧が高いな~と感じることのできる人はあまりいないのではないでしょうか。
鳥には気圧を感じる期間が耳に存在します。鳥にとって気圧や高度を知ることは命にかかわる大切なことです。一方、哺乳類には気圧を感じる能力はあるのでしょうか。
マウスを人工的に気圧が変えられる装置に入れて天気の変化に相当する微小な低気圧に一定時間曝露した実験があります。結果は耳の平衡感覚を司る内耳の前庭器官に気圧の変化に反応する部位があることがわかりました。1)
この気圧を感じる耳の内耳センサーは人によって感度が異なり、センサーの感度が高い人ほど気圧の変化に敏感で気象病の症状がでやすくなる可能性があります。
この前庭神経の過剰な興奮が自律神経のバランスを乱し頭痛や倦怠感などさまざまな気象病の症状をひきおこしていると考えられます。
PLOS ONE online 2019 Jan 25
Loering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice
その他人間の体調には気温や湿度の変化も密接に関係しています。
気象と痛みの関係を調べた調査では寒いと痛みが悪化すると答えた人が半数程度おり、皮膚や粘膜、脳、脊髄の温度や湿度を感じるセンサーが外界の温度や湿度を感じ取り、その刺激が自律神経のバランスを崩して不調につながると考えられています。2)
このように気候の変動に伴う体調不良の一つのメカニズムに気温や湿度、そして特に気圧の変化が密接に関係しているようです。そして人間の身体の側では内耳の働き、そして自律神経の働きが関与しているようですね。
次の回では気候の変動に伴う体調不良への対処の仕方などについてお話ししたいと思います。
1)PLOS ONE online 2019 Jan 25
Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice
2)PLOS One. 2015 Jun 15; 10(6) : e0129262
【参考文献】
愛知医科大学 PRESS RELEASE 2019 Jan 28
“気圧の変化を感じる場所が内耳にあった” ~気象病や天気痛の治療法応用に期待~
「気象病ハンドブック」 久手堅司著
院長 安久 正哲