【院長コラム】原因チェックと対策|疾患・薬の影響をやさしく解説
不眠症②
こんにちは。
今回は不眠症の話の続きになります。
前回は不眠症の概要と3つのタイプについてお話ししました。
今回は不眠を呈する注意したい疾患や薬剤についての話です。
睡眠時無呼吸症候群
みなさん名前は聞いたことがあるかもしれません。第6回、7回のコラムでも書きましたが、睡眠中に気道が閉塞して無呼吸状態になってしまう病気です。酸素不足の危険を察知した脳が覚醒させて呼吸を促すため目が覚めてしまい不眠につながります。高血圧や不整脈などさまざまな病気と関連があることがわかっています。気道が閉塞してしまう原因は肥満やもともとの気道の形状などで、CPAPという機器を装着して寝ることで改善が見込めます。
夜間頻尿
腎機能障害や前立腺肥大症、過活動膀胱などにより夜間の尿の回数が増えて、夜中に何度も起きて排尿に行くため不眠につながります。
適切な薬剤の使用や骨盤底筋のトレーニングなども有効です。
うつ病、不安症
うつ病の診断基準の中に「ほとんど毎日の不眠または過眠」という項目があります。
うつ病の63~90%、不安症の50~90%の方に不眠症状が起こるとの報告があります。
既日リズム睡眠・覚醒障害
聞きなれない名称かもしれません。人間の身体に備わった体内時計のリズムが地球の自転に伴う朝と夜の繰り返しのリズムと同調しなくなってしまっている状態です。
仕事で交代勤務をしている方や高齢者にもよくみられます。
睡眠時随伴症
これも聞きなれない名前かもしれません。睡眠中に起こる異常な行動や体験を特徴とします。
夜驚症といって睡眠中に突然叫び声をあげたり、寝床を出て歩き回ってしまう睡眠時遊行症、悪夢障害などがこれに当たります。
パーキンソン病やレビー招待型認知症、多系統萎縮症といった神経疾患に合併することもあります。
睡眠関連運動障害
睡眠中や睡眠前後に出現する単純で常同的な体の動きを特徴としています。
聞いたことあるかもしれませんがむずむず脚症候群や就寝中に起こるこむら返りもこれに含まれます。
脳卒中
脳卒中の後に20~50%の方に不眠症状が起こるとの報告があります。
このほかに高血圧や心臓病、呼吸器疾患、糖尿病、関節リウマチ、慢性疼痛、アレルギー疾患、慢性疲労症候群なども不眠につながる可能性があります。
一方、治療のために内服している薬剤の副作用で不眠が生じる場合もあります。
ステロイド、精神刺激薬、気管支拡張薬、β遮断薬、インターフェロン製剤といった薬で不眠の症状が出現することがあります。
治療のため必要でもあるので主治医と相談し薬剤の変更など検討した方がいい場合があるでしょう。
このようにさまざまな疾患や薬剤で不眠は起こる可能性があります。
次回では不眠症に対して具体的にどのようなアプローチをするのか。
薬の投与ももちろん治療の一部ですが、その他環境調整なども大切となってきます。
その辺の話を次回したいと思います。
【参考文献】
塩野義製薬 「ぐっすりコンパス」
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 「こころの情報サイト」
LaLaクリニック
安久 正哲