第13回 コラム
原発性腋下多汗症
みなさんこんにちは。
だいぶ春らしい日も増えてきて初夏のような陽気の日もでてきました。
みなさんは原発性腋下多汗症という名前を聞いたことがありますか?
多汗症というくらいだから、要は汗を多くかく疾患なのだろうと想像ができますよね。その通りです。わき汗をかきすぎてしまう疾患です。名前はあまりなじみがないと思いますが、実はけっこう身近な疾患です。
原発性腋窩多汗症とは、ホルモンや神経の異常など原因となる病気がないのにワキの下から過剰な量の汗が出てしまう疾患です。特に体温が上昇したり精神的に緊張した状態で汗の量が多くなるのが特徴で、ちょうどこれからの初夏の時期にかけて訴えが多くなってきます。優性遺伝し、親子ともに現れることが多く、その頻度は日本人で約10%といわれています。10人に1人ですから、そんなに珍しい疾患ではないですよね。
多くは思春期以降に発症して、場合によっては臭いや汗が気になり人前に出られなくなったり、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまう場合もあります。
人にも相談しづらい面もありますよね。
診断は次のように行います。
「シャツに汗染みが出るほどの大量の原因不明の発汗が6か月以上みられ、以下の6症状中2症状以上を満たす」場合に原発性腋下多汗症と診断されます。
1)最初に症状が出たのが25歳以下であること
2)左右両方に同じように発汗がみられること
3)睡眠中は発汗が止まっていること
4)1週間に1回以上多汗の症状が出る
5)家族歴にも同じ疾患の人がいる
6)わき汗によって日常生活に支障を来たす
原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版より
いかかでしょうか。当てはまる方や気になる方もおられると思います。
対処法としてまず思いつくのは制汗スプレーですよね。
では実際治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 外用療法
エクロック®ゲル:日本で初めて健康保険の適応が認められた塗り薬で、エクリン汗腺が交感神経から伝えられる汗を出す指令を受け取れないようにブロックすることにより発汗を抑える塗り薬です。12歳から可能です。
●ラピフォート®ワイプ:エクロックゲルと同じ作用機序で発汗をブロックします。保険適用で9歳から処方可能です。
●塩化アルミニウムローション:汗を分泌するエクリン汗腺にふたをすることで効果を発揮します。保険適応外になります。
②ボトックス注射
外用療法では効果が不十分な場合にはボツリヌス毒素の注射を行います。
ボツリヌス毒素が神経と汗腺の接合部における伝達を阻害することで、発汗を抑制します。
効果は4~6か月程度で、1年に1回~2回注射を行います。注射前に冷却し、疼痛を軽減しますが、片方のワキで注射を20回ほど行うため、疼痛があります。日常生活に頻繁に支障があるような重症多汗症の場合には、保険適応となります。
③手術
皮膚の下のアポクリン腺を切除します。皮膚を1か所か2か所切開し、アポクリン腺を除去します。また、めくり上げてアポクリン腺を取り除いた部分の皮膚は血の巡りが悪くなり、壊死してしまうことがあるため、しばらくはガーゼなどで圧迫し、運動を制限する必要があります。
いかかでしょうか。当院では外用療法のひとつ、写真にもあるエクロック®ゲル(保険適応あり)を取り扱っておりますので、わき汗にお悩みの方は一度ご気軽にご相談ください。
LaLaクリニック
院長 安久 正哲